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● 第一話「パリの公衆浴場」 ● 第ニ話「パンドラの箱!?」 ● 第三話「ある日の授業」 ● 第四話「トップ.シークレット」 ● 第五話「露出狂生徒」 ● 第六話「契約交渉」 ● 第七話「そんなアホな1」 ● 第八話「そんなアホな2」 ● 第九話「ガリッグの努力」 ● 第十話「ポンプ」 ● 第十一話「こんな生徒には」 ● 第十二話「ゲテモノ食い」 お読みになった感想などお便りください。
滞在記、旅行記、写真など 読みごたえがあり綺麗なものばかり集めました。 ◆ アルジェリア・スキクダ ◆ 日本とアルジェリア(1973年ある日の午後) ◆ ポッケモンのアフリカ ◆ このたびのたび(Assalam Alaikum !) ◆ プロジェクトの舞台 ◆ アルジェリア、カミュが見た夢 ◆ Algerissimo ◆ アルジェ |
語学をいかにしてマスターするか、どうやったらうまくなるかという話は、語学の学習法や参考書にごまんと書いてあり、そんなことを改めてここに述べる気はない。 とくにフランス語については、多くの女性の憧れと羨望の眼差しを受け、少し話せるだけで特別な扱いを受け、ちやほやされる。 しかしフランス語を話していて、女性からそんな憧れの眼差しで見られる、といったことは私には全くなかった。私自身フランス語は憧れでも何でもなく、単に仕事の道具であった。 初めてフランス語圏に行ったのが、フランス人が嫌う、日本でも地の果てと思っているアルジェリアだったからだ。 憧れを抱けなかったもう1つの大きな原因は、彼等の顔かたちや格好からして、アラン・ドロンやカトリーヌ・ドヌーブを連想させるものは何もなかったといったこともある。 ここで彼らが怒鳴り立てるフランス語は、映画にみられる歌うような、あるいは小鳥が囁くような愛の言葉とは無縁のものである。 それに加え、毎朝毎晩多くのアルジェリア人家政婦達が、廊下といわず宿舎の内外といわず、大声を張り上げ罵りあう言葉が、アラブ語混じりのフランス語であり、そこには命令や、自分の欲求を押し通す手段の言語としてしか感じられない。 ともあれ、ここはフランス語圏。まあ彼等と仕事するには、知っておくに越したことはないと思い、日本で入門書を買い求めてきた。朝晩10分か15分ずつ練習する。 毎日1つ2つの言い回しをおぼえては翌日使ってみる、といったことの繰り返しであった。このとき同じ現場にいた日本人の数は2、300人、いやそれ以上いたろうか。 そこでは通訳以外でフランス語をまともに喋るのはまずいない。 通訳は20人くらいいた。どうしてそれが分かるのかといえば、フランス語に興味のある者はだいたい通訳連中と付き合い、通訳達はかたまっているからよく目立つ。 私の同僚や先輩もアルジェリア勤務が最初から予定されていた者は、会社でフランス語の授業を受けていた。月日が経ち、だんだん分かってきたが、語学はセンスと情熱が必要である。 3ヶ月も経たないうちに、私のフランス語の方がずっとアルジェリア人に通じているし、同僚や先輩のフランス語は全く何の役にも立っていないことに気づいた。しかもそのレベルは止まったままである。 彼らはフランス語の必要性も感じなければ、興味もない。確かに現場事務所や工事現場に行っても、フランス語は特に必要ない。必要なときは、「あれ」「これ」「よし」「だめ」「コピー」といった程度で済む。 加えて日本で習うフランス語は、日本人にはほとんど馴染みのない文法で、非常にうるさい。 動詞の活用が1人称、2人称、3人称の単数、複数と有り、時制だけでも、現在形から半過去、大過去、単純過去、複合過去、未来ともうそれでちんぷんかんぷんである。 加えて直接法、条件法、接続法と、はじめにそれを聞かされれば9割方の人間は間違いなく逃げていく。 しかも日本ではどこでも初めにやるレッスンが、イラ、エラ、ヌザボンといった、お経の呪文に近い言葉の繰り返しである。これで大半が興味を失い脱落してしまう。 次にやっかいなのは数字である。 アン、ドゥ、トロワくらいは誰でも言える。それでも20まで憶えられればひと山越す。 それを過ぎると30、40、50、60と順調に行くが、69から70に移ったとき、60+10、60+11・・・となって少し戸惑う。うまくそれを越えたとしても、80になるとここで残りの大半が脱落する。 脱落する人は、80をなんと「4の20」といった言い方になると考える。 実際、4と20の単語を続ければ、それがフランス語の80である。 だから4の20+10が90、4の20+11が91ときて、99となると混乱は絶頂をきわめる。 4の20+19のとなって、それまでの複雑怪奇な数え方が一気に爆発し、脳味噌は膨張し、言語中枢と算術の神経回路が錯綜して呆然となり、本を閉じて布団をかぶり、寝るのみとなるのである。 だから、彼らの勘定は引き算でなく、「足し算」という言葉が使われるのではないかと思える。 レストランの勘定で、例えば115フランだったとする。500フラン札を出すと、給仕はまず偽札でないかどうか透かしを見る。次に5フラン硬貨を出して120という。10フラン硬貨を足していき、130、140、150、そして50フラン札で200としたら、後は100フラン札で300、400、500となって勘定が済む。状況によって初めの5フランか15フランを勘定の皿に残し、おつりを受け取る。これが慣れるまで、いや慣れてもまだるっこしい。(つまり支払い金額を引いた残りの額を足していく) ゆえにフランス語マスターの道は、ここまで述べたようなことをやらないに尽きる。 もう一つよく言われるのに、その国の異性と仲良くなることが上達の早道だということがあるが、これには異論がある。 友達になって色々話をしたり理解を深めようとか、口説こうとかやっているうちは語学にも熱が入るが、それを過ぎあるいは一足飛びに、男と女の関係になってくると、言葉は要らない。 お互いが肌の温もりやボディーランゲージに没頭した日には、フランス語の甘いささやきもとたんに不要となり、色あせてしまう。よって語学堪能者で美男美女は少ないと言ったら怒られるか。 【編集後記】 つい最近もフランス語を教える機会がありました。 どうしても発音習得には本やビデオなどでは限界があります。 聞いたことを繰り返し言っても間違いを繰り返すだけで、いっこうにまともな発音になりません。 問題は聞き分けられないから言い分けられないのと、口の中がどういうふうになっているのかわからない点にあります。 これはフランス人に教えてもらい矯正するしかありません。 まず簡単な「こんにちは」という意味のボンジュールがちゃんと言えるまでに1年かかります。 ボンもジュールもカタカナ読みをしていたのではいっこうに正しい発音とはなりません。 |