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滞在記、旅行記、写真など 読みごたえがあり綺麗なものばかり集めました。 ◆ アルジェリア・スキクダ ◆ 日本とアルジェリア(1973年ある日の午後) ◆ ポッケモンのアフリカ ◆ このたびのたび(Assalam Alaikum !) ◆ プロジェクトの舞台 ◆ アルジェリア、カミュが見た夢 ◆ Algerissimo ◆ アルジェ |
現場を憶えるだけではない。 配管や、機器の中を原料、副原料、中間品から最終製品までが流れる前に清掃しなければならない。 数千メートルに及ぶ配管の清掃は、気の遠くなるほどの作業である。 しかしその作業は豪快でもある。 圧力タンクや蒸留塔につながった配管は、次の機器に接続する手前で切り離され、仮の弁をつけたり、ベニヤ板、段ボール紙を何枚か重ねて蓋をする。 その塔槽類に空気で圧力をかけていく。3キロから5キロの圧になったところで弁を一気に開くと内圧放出とともに中の埃、泥、異物からありとあらゆるものが出てくる。 ベニヤ板、段ボール紙の場合は、それらが内圧ではじける大音響と共にゴミが出てくるが、ゴミ、埃どころではない。置き忘れの道具や小鳥の巣と共に親鳥、雛、糞、衣類、石、缶、鉄板の破片と何でもござれである。 そこで使う圧縮空気は、計装用空気供給のための圧縮機を使う。 我々はそれをエアーフラッシングと言っていたが、水を使用した洗浄もある。 これは水をタンクに貯め、ポンプで循環してゴミをとるものだが、水を使って良い機器と、水は絶対使えない機器がある。 油でのフラッシングもある。これは主に大型圧縮機の駆動部、潤滑部で行う。 精密な機器や回転機の軸受けなど、絶対にゴミや鉄の切りくずなど混入してはいけない機器においては、酸洗浄を行うことがある。これは専門業者に頼む。 空気で清掃しても大気中の水分は残るため、乾燥作業も必要となる。圧縮空気を、大型の乾燥器を通して機器、配管に送り込む。特に運転中、温度が零下になる精製セクションの後行程では、乾燥しないと水分が氷になって詰まってしまう。 この頃には工場の中枢部の圧縮機が稼働を始める。 これは3、4階建ての建物程度の大きさの中に収めるほどの大型機器である。これらを使ってエアーフラッシングが出来るようになれば、清掃作業は最終段階を迎える。こうした作業に4、5ヶ月から半年を費やす頃には、機器、配管から弁の位置まで体が憶えてしまう。 計装機器の作動チェックも計装技術者だけの仕事ではない。運転と計装は密接なつながりがあって、車でいえばフロントパネルに当たる各種の計器類が、運転の唯一のパイロットである。 これら計装機器の設定は実は計装員の仕事ではない、運転員の仕事である。 システムの性格をとらえ、感度や応答速度、反応動作の係数をセットする。調節弁の動作チェックだけでなく、安全弁の動作チェックでは実際レバーを引いて安全弁を噴かせるが、この音がまた耳をつんざくほどの轟音である。 配管のほとんどは地上から5〜6メートルないし7〜8メートルほどの高架であるが、そうしたところには必ず点検用の通路がある。ところが建設中であったり、滅多に操作しない弁のところには通路はない。そんなときは配管を伝って行く。またはしばしば這って行く。 80メートル、90メートルの蒸留塔にも登る。おそるおそるてっぺんに辿り着くと、あまりの見晴らしの良さに、降りるのがもったいなくて飽きずに見回していた。紙飛行機を飛ばしても、なかなか地上に着かないのが嬉しい。 そのうち空に同化したような気になり、そのままふわりと飛んでいけるんじゃないか、という気分になる自分が恐ろしくもあった。 そうこうしている頃にはプラントも形を整え、機器単体の試運転から小システムへ、さらに中システムの稼働となる。 水だけで循環運転したり、油や中間製品をドラム缶で注入しての運転を行うこともある。分解炉は数十メートルの高さに及ぶ炉の中に、特殊な加熱分解用コイルがあり、そのコイルの中を最初の原料が流れる。 炉は火をつければ終わりではない。建設後に数日をかけてゆっくり乾燥焚きを行う。炉の中のバーナーも数十本あり点火の順序と要領は大事である。 この分解炉で、はじめに高温蒸気と混ざった原料が高熱で分解され、水素、メタン、エタン、エチレン、プロピレン、ブタジエン等とプラスチックの原料が造られ、重質分を除いたガス分がメインコンプレッサーで圧縮され、冷却されると液化する。 それを蒸留していくと、炭素数の大きい炭化水素から分離されていき、最後はエチレン、メタン、水素と分かれていく。 このエチレン、何に使うかといえば、ポリエチレン、塩化ビニルといった代表的なプラスチックの原料である。だからエチレン工場といっても副原料も多くエチレンコンビナートの周りにはプラスチック工場群が隣接して建設されるのである。 ブタジエンは合成ゴムの原料である。 一度原料が投入されると液またはガスが機器、配管を流れ、圧縮、冷却され、液化された後に精製、分離が蒸留塔で繰り返される。 石油化学工場にある高い塔の多くは、煙突を除けば蒸留塔で、この中には、トレイと呼ばれる穴の明いた鉄板に、パカパカと動く蓋がついたものが数十段から百数十段詰まっており、検査のため人間が中を移動して1番下から最上段まで移動できるようになっている。 一気に述べてしまったが、原料が投入されてから初めての製品がでてくるまで、うまくいってもおよそ一週間がかかる。この間、12時間の交代勤務を行い、途中何度か昼夜の勤務を交代するが、そのときは18時間勤務となる。 最低の人数で行うため、2交代といっても2チームしかいないから、当時はこうした勤務であった。 原料を投入した時点では、分解炉を通った分解ガスと呼ばれる複合製品は、重質分を除き、全てフレアースタックに送られ燃焼して大気に放出される。このときの炎の高さは100メートル前後にも達し、この世のものとも思えないほどの大きな松明のようである。 それが少しずつ後工程に送られ、それらから少しずつ副製品が分離されていくに従い、炎の大きさも次第に小さくなっていく。 最後にエチレンの品質が合格に達して製品タンクに送られる瞬間、運転員達が集まるコントロールセンターでは、歓声が沸き起こる。だがそれはうまくいっての話である。 原料投入から初めての製品が出来るまでは、全くいろんなことが起こる。小さなポンプが1台動かないだけで、もう製品は出来ない。電気、蒸気、水、計装用の圧縮空気、冷却水、その他あらゆる副原料、添加物、触媒のどれが欠けても製品、副製品はうまくできない。 緊急停止はいつでもやってくる。それは1つの赤ランプと、けたたましい警報から始まる。 1つのランプが点滅し始めると、瞬く間に数十のランプが点灯し、やがてコントロールセンターの十数面のコントロールパネル一杯、一斉に点灯し、騒然となるのに1分とかからない。 はじめは頭がカーとなって一体なにが起こったのか、どうすればいいのか分からず、あたふたするのみであるが、そんなことが何度も続くと、原因と対策を考えるまでもなく、自然と体が動いている。 言えることは、例のインターロックが作動し、機器が爆発したり壊れないように、最低限の安全装置が働くため滅多なことで事故は起こらず、その作動の確認が最低限の運転員の仕事である。 しかしそれが頭で理解して、体がついていけるようになるためには、場数を踏むしかない。 ある現場では電気、水、ガス、蒸気が隣接した顧客のプラントから供給されていたが、それらが順番に毎日ストップするため、こちらのプラントもそのあおりを受けて緊急停止する日々が続き、スタートとストップを繰り返し、へとへとになってしまった。 そうした場数を踏むこと、そしてプラントの特性をよくつかむこと、それがその道のエキスパートといえるだろう。彼らはあたかも車をあれこれ乗り換えるように、いろんな工場の試運転に精通している。 【編集後記】 ターンキーという引き渡し条件がある。 車に喩えていうなら、鍵を回すと動く、という状態での引き渡しである。 このほかにFOB+スーパーバイズ(機器、配管をすべて送り、後は現場監督をする。つまり工場の建設は顧客が労働者を集めて自前で行う)など、いろいろある。 こうした大型装置群の試運転は車の運転と違い順序が複雑でそれなりにエキサイティングでもある。 きっと航空機や船舶などもこうしたプロセスを辿るのだろうなとおもう。 一度そうした現場を見てみたい。 ちなみに大型ビルの空調設備試運転は見たことがある。 |