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● 第一話「パリの公衆浴場」 ● 第ニ話「パンドラの箱!?」 ● 第三話「ある日の授業」 ● 第四話「トップ.シークレット」 ● 第五話「露出狂生徒」 ● 第六話「契約交渉」 ● 第七話「そんなアホな1」 ● 第八話「そんなアホな2」 ● 第九話「ガリッグの努力」 ● 第十話「ポンプ」 ● 第十一話「こんな生徒には」 ● 第十二話「ゲテモノ食い」 お読みになった感想などお便りください。
滞在記、旅行記、写真など 読みごたえがあり綺麗なものばかり集めました。 ◆ アルジェリア・スキクダ ◆ 日本とアルジェリア(1973年ある日の午後) ◆ ポッケモンのアフリカ ◆ このたびのたび(Assalam Alaikum !) ◆ プロジェクトの舞台 ◆ アルジェリア、カミュが見た夢 ◆ Algerissimo ◆ アルジェ |
口論は日常茶飯事で、口論のために生まれてきたんじゃないかと思う。 またどうしてこんなに一日中喋ることがあるんだろうかと思うほど、がなり合っている。 お喋りもあるが、口論は絶えない。朝起きてパンを買いに行くときから始まる。 パン屋に行列をつくり、店の女将が手際よく客をさばく。 「それそれ!一番右の良く焼けたやつがいい。」なんてのはフランスでもよく見かける光景だ。 次の客は 「焦げ目のあまりない、ただ、外側がカリカリッとしたのが良いな。」 フランスパンは外側のカリッとした焼き具合が香ばしくていい。 「クロワッサンとバゲットをちょうだい。ねえこれも買うから少しまけてくれない?」 女将は答える。 「うちはまけないけど、その代わりこれおまけしとくね、お宅のジェミラちゃんによろしく」 ジェミラというのは客の娘である。 八百屋でも肉屋でも買い物は常に交渉ごとである。 こんな人々と、かたやひと月喋らなくても生活できる日本とでは、生活のベースがどだい違う。 ああ言えばこういう式の彼らの交渉術は、小さい頃から身に付いたものである。 そんな国に日本人は、彼らを見下したように発展途上国だからと、東南アジアの成功体験を引っ提げてやってくる。結果はもう、けちょんけちょんに交渉でやられ、大赤字で撤退するならまだしも、最後まで付き合わされて瀕死の体で放り出される。撤退すれば多額の違約金を取られる。 工場内の道路舗装が契約に記載されている。日本側は工場の機器類が据え付けられた周辺及び事務棟、タンクヤードへの連絡道路くらいに理解しているが、敷地内は全部舗装をさせられたこともあったらしい。 理由は簡単。道路という単語の最後に複数形のSが付いていたからである。 もう一つ、お客さまは神様といった感覚は、彼らにはない。 確かに上得意の客は彼らも大事にするが、決して自分を卑下したりはしない。 相手はお客さんだから「口のききかたに気をつけろ」といった言い方もないのである。 するとどうなのか。かれらは客と請負業者は対等と思っている。 このサービスの対価に客のあなたは金を払う。私はあんたのできないサービスをやってあげる。いやなら他を捜したら、と言わんばかりである。 理論的に話をしている間はまだよい。それがいつしか理屈になって、屁理屈から不条理へと変わる。 しまいにそれは当然の、こちらがやるべき義務になってしまうから恐ろしい。 生徒たちの口論の多くは、そうしたたわいもないことから始まる。 盛り上がった頃必ずそこに割ってはいり仲裁するものがいた。 「イスマハリ、イスマハリ」(ごめんよ、ごめんよ) 「ハッベス、ハッベス」 (待った、待った) と言って双方をなだめる。 そのタイミングと口調が実に合っていて。 口論がおきるたび私もそれにならい「イスマハリ、イスマハリ」を連発したものだ。 運転員養成クラスで、我々講師仲間でも評判の悪い生徒が一人いた。彼の機嫌が悪いともう手が付けられない。私の日本製ボールペン一本が欲しくて、自習時間中、粘って私を苦しめたのも彼だし、授業中も自習中も、喧嘩や雑談で、いつも私を悩ませた。 ある日暴れすぎて、ズボンの股を破ってしまった。 「ムッシューこんなズボンじゃ恥ずかしくて町を歩けない。今日は先生の車で送ってくれ」と頼む。 「仕方ない、今日は特別だぞ。そのかわり、私の帰宅時間まで待っててくれ」 といったが、その時間には誰もいなかった。 翌日の自習時間、昨日はどうして車で連れ帰ってくれなかったのかと非難するので、悪いのはそちらの方で、探したが誰もいなかったと答えると 「そんなはずはない、俺は待っていた。昨日は優しそうに言うから信じていたのに、裏切られた。 本当は俺をからかったんだろう」 「そんなことはない。それにそんなことをしても私には何の得にもならない」
「いいや俺には分かっている。あんたは俺をからかったんだ。そしてあんたは俺のあれを見たかったんだろう」 「おまえさんのあれってなんのことだ」 ここまで来るともう無茶苦茶な論理で、相手をする気にもならない。 無視したら一人勝手に喋り続けている。こうなると自分の言葉に酔っているとしか思えない。 「よしそんなに言うのなら、俺のあれを見せてやる」 そう言い、こちらが何もいわないのに自分のズボンのベルトを外し、チャックを降ろし前を開ける。 座っている私の前に立ちはだかり、皆には背を向けた格好でやおら自分の一物を取り出し、私のデスクの端にいったん乗せたかと思えば、それをつまんで机をピッタンピッタンとやりだした。 その音が目の前で聞こえるが、ズボンのジッパーを下げたあたりから私はもう目をそらしていたし、あきれてものも言えず、ひたら無視することにした。 その間、誰も止めようとしないし、成りゆきを面白がって、興味深く見守って いる。 この時思い出したが、男の子は小さい頃、よく皆でおしっこの飛ばしっこや、おちんちんの見せあいをする。男の子同志で良くやる遊びで、仲間意識や連帯感が不思議とでてくる。それに似たところがある。 彼の行為は決して私への侮辱ではなく、むしろ親愛の情であったのを知っているが、他の人には信じがたいと思う。そのピッタンピッタンを終えたらにこにこして席に戻り、この話は後々までの語り草となった。 【編集後記】 自分の逸物をピッタンピッタンとやる話は漫画にもしてみました。 今なら余裕を持って対処したのでしょうが、当時は無視するのが精一杯でした。 議論と口論は絶え間なく、口角泡を飛ばすとはまさに彼らのためにあるようなものです。 おかげでというかそのせいで、私もかなり理屈っぽくなりました。 |