建築設備調査隊! 第20号 2002.03.01より
◆◆◆==家庭内排水設備の劣化調査診断===
はじめに
 家庭内における排水は用途、水量も限られているが、それ故に起こる問題も事務所ビルとでは違っている。特に集合住宅においては給水管、排水管とも各戸の配管が繋がっており、それが1戸建てとはまた違った問題を引き起こすこともある。

排水管の種類としては汚水排水、雑排水、雨水排水と大きく3つに分けられるが、今回は雑排水に焦点を絞って述べてみたい。雑排水は主に以下の場所から発生する。

1.台所 2.浴室 3.手洗い・洗面所 4.洗濯機

 最近の建物は雑排水管にコーティング管や外側に耐火材を巻いたトミジ管と呼ばれるもの、硬質塩化ビニル管など、錆びにくい材料が使用されているため、錆瘤や配管の穴あき事故は減っているが、それでも皆無ではない。よくある事故例、診断例では、経年劣化、振動、衝撃による継手部分のひび割れ、施工時の糊不良から来る漏れがある。たまに、排水管洗浄時にちょっとした衝撃から塩ビ管などがパキッと割れることがある。これはもともと施工時に応力がかかって無理をしていたのが経年劣化と共に破断した結果といえる。

 台所の排水で一番の問題は脂肪分の固着であろう。料理に使った油、流す直前は液体であるが、ちょっと冷えると固まる脂肪分は台所排水の詰まりを引き起こす最大の原因となる。市販されている詰まり防止の薬剤はそれなりに効果もあるが、適切な部位に適量の薬剤を使用することが肝心で、これもなかなか難しい。

 浴室、手洗いからの排水では毛髪、脂肪分の混じった垢の付着堆積が排水不良の原因となる。浴室で特に注意すべきことは浴槽排水、床排水共にトラップがついており、臭いが逆流しないようにはなっているものの、換気扇や天井扇などが設置されているところが多くなり、密閉空間で長時間換気をしているとトラップの水封が切れて、下からの臭気が浴室内に充満してしまうことが報告されている。そのためにも使用しない浴室では完全に排水口を塞ぐなどの対策が必要となってくる。

 その他、手洗い、洗面所排水における問題は異物の落下であろう。櫛、歯ブラシ、指輪などトラップの部分で詰まってしまい、そこに毛髪や垢、汚れが溜まって排水不良を起こすことがある。

 洗濯機からの排水は支障なく流れそうであるが、これもベランダや、屋外にある場合、排水口は洗濯機専用のものは少なく、ベランダの雨水排水をかねている場合が多い。そんなときは排水口の入口が外からの汚れ、木の葉、砂埃、繊維かすなどの為だんだん塞がれ排水が悪くなり、常時水が溜まっている状態をときどき見かける。これは排水不良というのみでなく、いつも水に晒されている鉄部にとっては腐食が速まる懸念がある。

 以上の点に注意すれば排水における諸問題のかなりが解決し、排水管寿命、使い勝手も改善されるのでは無かろうか。当社が依頼を受ける排水管の調査では、内視鏡観察、抜管調査、肉厚調査などがあるが、鋼管を使用した排水管では抜管、肉厚測定の意味はあるものの、塩ビ管やコーティング管ではその必要はほとんどない。また40Aや50A程度の小口径排水管では詰まりからくる問題がほとんどで、詰まりを放置したために起きる錆瘤の発生と成長であるから、年に1度の定期洗浄を行うことでこうした事故もかなり防ぐことができると思われる。

論文掲載集 [1] [2] [3]